福岡県

福岡県議会とEM

平成13年9月定例会

◯二十七番(一尾 泰嗣君)

 また、有明海再生に期待し、ノリの生産が始まりました。今後、ノリの生産の見通しについて知事の見解をお伺いいたします。
 漁民の方以外に多くの県民が心を砕き、有明海の再生に向かった取り組みが始まっています。有明海の漁業組合では他県の実施例を参考に、有用微生物EM菌を入れただんごを漁場に投入しています。ボランティア二十数団体がEM菌を使い河川を浄化し、有明海の再生を図ろうとボランティア活動が始まっています。川の上流に木を植えようと漁民の森の造成に取り組む漁業組合もあります。しかし、果てしない海の再生は、ボランティアや組合の能力を超えた継続の難しさを感じます。行政とボランティアの協力が強く叫ばれている時期、有明海の再生という切迫した、かつ特殊な事情の中、県が何らかの支援をすることができないのでしょうか。有明海の再生を強く願い、知事の御所見をお伺いします。

◯知事(麻生 渡君)

 有明海の問題についてでございます。各種の対策でございますが、今年度の対策といたしましては、底質改善のための覆砂事業、適切な養殖管理のための漁場環境モニタリング体制の強化、海水交流改善のための減さく、酸処理剤使用の厳正化に取り組みますとともに、人工魚礁設置によりまして、貧酸素水塊の解消などの実証試験にも取り組んでおります。また、プランクトン抑制のためアサリ稚貝の大量放流、サルボウの天然採苗を実施しております。その後の調査を見ますと、アサリ稚貝は順調に生育をいたしております。サルボウの天然採苗につきましても、大量の稚貝の発生が確認をされております。今後も漁業者の皆さんが安心してノリ養殖などに取り組めますように、漁業振興対策、漁場環境の保全対策を積極的に推進をいたしまして、宝の海有明海の再生に全力を挙げて努力をしてまいる所存でございます。
 今漁期の見通しでございますが、今漁期のノリの採苗は、十月の四日から始まるわけでございます。現在のところ水温、塩分、栄養塩などの海況の条件は良好に推移をいたしております。採苗は、順調に行われるものと期待をいたしております。今漁期は、海況やプランクトンの発生状況の漁場モニタリングを強化しております。また、得られたデータを迅速に漁業者へ伝達いたしますとともに、摘採時期、ノリ網の撤去時期についての養殖指導をよりきめ細かく行うことによりまして、収穫量の増大を図り、今漁期が豊作となりますように全力を挙げて取り組む所存でございます。
 ボランティア活動の点についてでございます。有明海再生のための各種のボランティア活動の広がりにつきましては、私どもといたしましても大変心強いものがございます。有用微生物を活用した漁場環境の改善、有明海を豊かにするための森づくりなどのボランティア活動につきましては、県といたしましても活動団体と十分連携をとりまして、活動の場の確保、実証試験などの技術的な支援など、有明海再生のための努力をしてまいる考えでございます。

平成13年9月定例会

◯二十九番(石橋 保則君)

 最後の質問です。河川などの水質浄化についてです。今日、生活排水による河川の汚濁は深刻となっています。産業系排水は水質汚濁防止法による水質規制の強化などによって大幅に改善されてきましたが、生活排水による汚濁負荷が水域の自浄の限界を超えて流入しているため、河川の汚濁は改善されていません。県環境白書によると、河川などの汚濁負荷の六割から七割が生活排水であると言っています。水質汚濁の代表的指標であるBODやCODはほぼ横ばいの状態であり、望ましい水質環境を保全しているとは言いがたい現状と環境白書は言っております。大牟田市内に流れる河川の水質調査では、五つの河川、九カ所の調査地点で環境基準(BOD)に適合している地点はわずか一カ所という現状です。昨年来、有明海はノリ不作問題が発生し社会問題となりました。このノリ不作の原因については、いわゆる第三者委員会などで調査されていますが、諫早干拓あるいは海底陥没、あるいは筑後大堰等いろんな複合的な要素が重なり合っていることは事実だと思っております。と同時に、その原因の一つが生活排水などによる汚染物質の河川からの流入による有明海の水質汚濁であることは明らかであります。有明海をよみがえらせるためには、私たち自身、河川環境の改善も重要な課題だと認識する必要があるだろうと思っております。
 このような状況の中、県下各地で河川の浄化へ向け、家庭からEMを使った運動が進められております。EMとは有用微生物群で、家庭においてはEMぼかしによって生ごみを堆肥化し、ごみの減量化を図ると同時に、家庭菜園や花壇に使用したり、また水の大きな汚染源の一つである米のとぎ汁をEMで発酵させたEM活性液を台所から流すことにより汚濁負荷の軽減と下水路を浄化するなどの運動が行われています。
 私はことし四月、大牟田市内の環境ボランティア団体とEMによる河川浄化運動を進めている熊本市河内町に調査に行きました。河内町は有明海に面した漁業、ミカン栽培が中心の町で、平成七年から地域婦人会はEM活性液を使った河川浄化運動に取り組みました。その結果、町内を流れている河内川に堆積したヘドロが消滅し、川に清流が戻り、三十数年ぶりにホタルが帰ってきたという話を聞くと同時に、河内川の河口周辺海岸のヘドロも消滅し、アサリなどが再び生息する環境に改善された話を聞きました。漁協の話では、ことしのノリ不作でも河内漁協だけは影響が少なく、EMによる河川浄化運動などが河口周辺の環境改善に大きな効果があったのではないかと考えられています。熊本県におけることしのノリ生産高を見ますと、ノリ不作により生産枚数で全県では前年度に比較し平均八〇%と落ち込みましたが、この河内漁協だけは前年度に比べ何と一〇三%という突出した結果となり、その効果が生産枚数でも裏づけられていると考えます。また、大牟田市や柳川市、大和町など県内の漁民の間でもノリ不作を何とか乗り切ろうと熊本や広島などを視察し、有明EM海苔研究会を発足させ、EMを活用したノリ栽培の研究を進めています。また同時に、「よみがえれ、命の源、有明の海」を合い言葉に河川浄化の運動が大きく広がっています。大牟田市内においても各団体で環境改善の取り組みが進められています。大牟田魚市場では排水路にEM活性液を流し、その結果、魚市場独特の悪臭が消え、周辺住民の苦情がなくなったり、排水が流れ出た海岸に大量のゴカイ、ウミタケの生息が鹿児島大学の研究者により確認されました。また、団地内にあるヘドロが堆積した堤の浄化や、校区衛生連合会が中心となった運動、食品業者や食堂などでもEMを使った環境浄化の取り組みが進められ、悪臭が消えたり、小川のヘドロが消滅し、メダカの泳ぐ姿が見られるようになったり、あるいはカワニナの生息が確認されたりするなど大きな効果があらわれています。また、このような運動は久留米市、行橋市、広川町を初め県下各地で進められており、柳川市では柳川のシンボルである掘り割りの浄化を図るため柳川市がみずから進めるという方針を決定いたしました。
 そこで、知事に質問いたします。このような県下各地で行われているEMによる河川浄化や有明海の環境改善に向けた取り組み、ノリ栽培への活用の研究などの動きに対してどう把握されているのか。また、今後EMについてその有用性を県としても研究、検討する必要性があると考えますが、知事の御所見をお伺いし、私の一般質問を終わります。
 御清聴ありがとうございました。(拍手)

◯知事(麻生 渡君)

(前略)
 有明海や河川浄化につきまして、微生物の活用の点についてでございます。有明海に流入をいたします河川を中心といたしまして有用な微生物を活用する、これによりまして環境の改善をしていこうという取り組みが熱心に展開をされております。このため県は、その有用性、効果的な活用方策につきまして、県内外の取り組みの事例、研究事例などの情報収集に努めております。また、ノリ漁場における有用性につきましても実証試験に取り組んでいるわけでございます。今後も幅広く情報の収集、試験データの蓄積に努めまして、その有用性について研究をしてまいる考えでございます。

平成14年9月定例会

◯二十九番(石橋 保則君)

 最後に、漁民や地域住民が一体となった有明海の環境浄化の取り組みについて質問いたします。ノリ不作をきっかけに有明海の環境問題が社会問題となる中、EM(有用微生物群)を使った環境浄化の取り組みが漁民や地域住民が一体となって進められております。陸上におけるEM活性液を使った水質浄化の取り組みが約二年にわたり県内各地で行われ、その結果、各地で用水路のヘドロが消えた、悪臭がなくなった、あるいはカワニナやメダカが生息するようになったなどの効果があらわれてきております。漁民の間でも、ノリ養殖後のノリ網の後処理に使ったら非常に効果があったという経験、また広島県内海町におけるEMをノリ養殖に活用し効果を上げている経験や、熊本県河内町漁協の取り組みなどから、漁民有志を中心にEM海苔研究会を発足させ、EMを使った環境改善の取り組みが始まっています。そして本年の漁期を前に、有明海漁連内の単協や婦人部またグループで、通称EM団子──これはEM活性液とぼかし、そして土を混ぜ合わせてつくった野球ボールくらいの大きさのものですけれども、これをつくり、自分たちの漁場に投入しております。これは、県内のほとんどの漁協で行われ、大和高田漁協では十五万個以上、大牟田でも三万個以上、さらに柳川や大川漁協でも取り組まれています。漁民にとってある意味では、わらをもつかむ思いでの取り組みだと思います。
 そこで、水産林務部長に質問いたします。ノリ漁場における有用性について、有明海研究所でも研究されていると聞いておりますけれども、その研究の内容と評価について質問いたします。さらに今後、いろんな角度から研究をさらに進める必要があると考えますが、今後の取り組みについてあわせて答弁をお願いし、また、今申し上げました漁民の取り組みに対する見解もお尋ねいたします。
 次に、昨年の九月議会においてEMに関する質問に対し知事は、県内外の取り組み事例や研究事例など幅広く情報収集に努めると答弁されましたが、その後の取り組みと今後の取り組みについて環境部長にお尋ねいたします。
 最後に、各地域で行っているEM活性液などを使った水質浄化などの取り組みに対し、今後県としても関係市町村とも連携を保ちながら積極的にこれらの取り組みにかかわっていただくことを最後に要望いたしまして、私の質問を終わります。
 御清聴ありがとうございました。(拍手)

◯知事(麻生 渡君)

 有明海のノリ漁業権の行使の適正化問題についてでございます。有明海のノリ養殖の経営、この安定的な発展を図りますためには、ノリ漁業権の行使の適正化がぜひ必要であるというふうに考えております。このような考え方のもとに、漁業権者でございます有明海の漁連に対しまして、これまでこの方向に向けての指導をしてきたところでございます。来年の九月には漁業権の免許の更新が行われるわけでございます。県といたしましては、この更新期をめどに漁業権行使の適正化に向けて取り組んでまいる考えでございます。
 有明海の再生のための特別措置法と再生計画についてでございます。有明海の再生を図りますためには、有明海再生特別措置法の制定が欠かせないというふうに考えておりまして、この早期の制定に向けまして関係四県で、これまでも強く要望してまいりましたが、引き続きその成立を要望してまいりたいと考えております。そして、本県としましては特別措置法に基づく実効性のある再生計画を策定し、実施してまいりたいと考えているわけでございます。

◯環境部長(紀伊 富夫君)

 有用微生物群に係る情報の収集についてお答えいたします。県では、有用微生物群を利用した環境改善に関する県内外の研究や取り組み事例を把握してまいりました。その効果につきましては、さまざまな報告例があります。現段階では十分な効果を確認するには至っていない状況でございます。しかしながら、有明海流域住民の方々が、この微生物群を利用した水質浄化に熱心に取り組まれていることなども踏まえまして、今後とも情報収集を継続し、その有用性を見きわめてまいりたいと考えております。

◯水産林務部長(梅野 正喜君)

 ノリ漁業権行使適正化に関する具体的取り組みについてでございます。ノリ漁業権行使の適正化につきましては、長年の慣行などのため困難な状況にありましたが、ノリ漁家経営の安定化のためには、ぜひとも取り組まなければならない課題と考えております。今後とも有明海漁連と一体となってこの課題の解決に努めてまいりたいと考えております。
 有用微生物群の効果についてでございます。有用微生物群の効果につきましては、県の有明海研究所でCOD、硫化物量、生菌数を指標として投入前後の底質を検討してまいりました。短期間では十分な知見を得ることはできませんでしたが、漁民の方々が熱心に取り組んでおられることから、これらの方々と連携しながら漁場環境などへの効果について、さらに研究してまいりたいと考えております。

  • 最終更新:2013-11-25 07:16:26

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